2016-05-23

気象学会春季大会予稿集を読んでみた

つい先日東京で学会があったんですってね。申し訳ないですけど気が付きませんでした。
予稿集が公表されてれば学会に行こうかなという気にもなるかもしれませんが、まあ、今回は他用があり、いずれにしても無理でした。

予稿集を手にする機会があったので、ぱらぱらと眺めてみました。気になるというか、「へぇ」と思った講演。
他機関の観測に偏っていますが、それは観測をよく知らないからというのと、気象庁については逆に下手にコメントできないからです。

・B152 岩下ほか:地上稠密気象観測データを利用した突風予報システムの開発

明星電気のPOTEKAという、水平間隔2km、1分間隔の稠密な気温観測(ほかの要素も観測しているかどうか知らない)によって、ダウンバースト事例を調査して、突風被害の約40分前に被害地域の近隣(スケール感はわからない)に突風発生可能性を、約30分前に被害地域に突風発生可能性と到達予想時刻を伝えることができたハズとの結果という。

これは結構すごいこと。 まあ、そういう事が可能な地理的条件が限られたりもするでしょうが。

・D152 高木ほか:金星気象学のための「あかつき」データの紹介

あかつきというと初音ミクくらいしか知らなかったのですが、金星周回軌道に入れたんですね。それどころか結果が出始めているという話。

追跡風のが作られているんだそうです。日本の探査だから、日本人が研究しないともったいないが、専門家が不足しているのでありましょう。そもそもデータ同化をイチから作るような話だから、こういうのを経験した人は、気象庁でも即戦力として使えるでありましょうね。
とだけ言って援助も何もしようがないですが。

・D204 川村ほか:地上デジタル放送波を用いた水蒸気観測手法の研究開発—反射波を用いた初期観測結果—

NICTでは地デジ放送波の遅延で水蒸気量の観測ができないか研究していて、相応の結果を得ているようです。
原理としてはGPS可降水量と同じですけど、電波源が違うので低いところが見られますし、そこの水蒸気は使いでのあるデータです。
放送塔から山岳への測線をいくつか張って長距離測線データの3次元変分同化などできると本当にいいんだけれどと思いますね。できるかどうかは知りませんよ。

・C305 神山ほか:大気太陰潮汐による降雨微小変動現象の検出およびそれを用いた相対湿度に対する熱帯降雨の感度の推定

大気太陰潮汐は好きなんですよ。むかし自分でも検出やったから。あれ、いつだったかなあ。学部4年のレポートだったけど、オリジナルデータだったから公刊しないで終わったのは今から思えばもったいない。

地球上の現象は太陽日周期・太陽年周期の日射によって駆動されているのであるけれど、十数年のデータを集めると太陰潮汐の影響をみることができるわけです。
そんでもって気圧の 1gpm オーダーの昇降で気温の断熱変化で相対湿度が 0.04% とかいったオーダーで変動して、降水量の期待値が 1μm/h のオーダーで変動するはずで、それが見えたというすごい話。

で、1%の相対湿度増加に対して10%の降水量相対増加が見込まれるという話です。