2024-03-30

林祥介先生 最終講義(2024-03-30)

不肖とはいえ一応弟子ながら、業務繁忙と長旅に耐える体調でもないのでリモート聴講とさせていただきました。

やっぱり林さんは林さんだわなあ、と思う所がいっぱいで、しかしまあ大先生になって組織支えて丸くなったんだろうなあとも思いました。

最終講義ってのは経歴をふりかえるものだけれど、林さんのは地球惑星流体力学をふりかえるんですよね。フォンノイマンが軍事に次ぐ電子計算機のアプリケーションに天気予報を選んで、そこで地球流体力学というプログラムが始まって、途中から林さんの経歴が飛び込むんだけれど、神戸大惑星科学の取り組みもその延長上にある。若い人たちに自分の回顧だけじゃなくてビジョンをわかりやすく見せるのは有益なことですし、学問を背負っているというプライドなんだろうなあ。

ノイマンが数値天気予報を成功できると思ったのは理詰めではなくて信念から始まったのだけれど、熱意と能力でリチャードソンの轍を踏まないように理論を探求する。具体的には当時の計算機はものすごく小さいので、計算可能な小自由度の系で気象の代表的変動を表現できるものを探索したわけですね。それで地球流体力学が始まったわけですね。

で、計算できるからヨシではなくて、なぜそうなるかが語れないといけないというのがいつもの林節で、その道具立ては波動(と対流)なわけですね。

いっぽうで時代が下って計算規模が大きくできるようになってくると、気象学はだんだんシステム科学になってくるわけです。惑星大気もどうやらそうらしい。そこで、一人ではできないのでインフラ部分(データハンドリングや可視化など。私見HPCも入るべき)の共用化を地球流体電脳倶楽部みたいに同人でやったが、専従スタッフ化することはできなかったのは忸怩たる所。アメリカは2000年代からそっちに舵をきってどんどんやっている、というような話でした。

草創期の地球流体電脳倶楽部は林・酒井が開発力のある塩谷さんの防壁になる、という発想だったというのも興味深い指摘で、開発力がある人は時にいるわけだけれど、力がないユーザが圧倒的に多いので、守る役割をもたないと立ち行かなくなってしまいますね。それは、誰がやろうともたぶん変わらないわけです。自分事にならないうちに公でも言っておくとよいポイントなのでありがたい。 

[2024-04-05追記] 次のGFDセミナー資料がだいたい近い。「地球流体電脳倶楽部の35年」

Microsoft PowerPoint - 240317_GFD_YYH.pptx (cps-jp.org)

0 件のコメント:

コメントを投稿