2019-07-09

(論文読みメモ)Matsuoka et al. 2019: Automatic Detection of Stationary Fronts around Japan using a Deep Convolutional Neural Network

Daisuke Matsuoka, Shiori Sugimoto, Yujin Nakagawa, Shintaro Kawahara, Fumiaki Araki, Yosuke Onoue, Masaaki Iiyama, Koji Koyamada, Automatic Detection of Stationary Fronts around Japan using a Deep Convolutional Neural Network, SOLA, Article ID 2019-028, [Advance publication] Released June 28, 2019, Online ISSN 1349-6476, https://doi.org/10.2151/sola.2019-028https://www.jstage.jst.go.jp/article/sola/advpub/0/advpub_2019-028/_article/-char/en

メソ解析の諸量を入力に、天気図画像から抽出した前線位置を出力(教師)として学習させてみた結果が報告されている。
たとえば1000hPa面風向、風速、温度傾度、925hPa相対湿度、850hPa水蒸気量、相当温位を入力とすると前線位置がよく再現された、という。

さしあたり、著者らは気候予測のシミュレーション結果から前線を描いてみたいという(イントロ1パラ)ので、その目的からいうとこれでいいのだろうけれど、
気象庁からみると、これは、前線解析が実際に何をしているのかを定量的に評価したものともいえるだろう。おそらくはじめて。

水蒸気量や相当温位は850hPa面のそれと相関が高いというのは、925hPaでの判定率との比較がないけれど、まあおそらく、高層天気図FXJP854を見て前線を引いていたからなのだろう。学習期間は2006年4月〜2016年3月なので、925hPa相当温位の動向に注目が集まるより前の期間が多い。

2010年代初頭にもっと下層の水蒸気に注目すべきだということになっていって、現業業務の道具立ても次第に整備されていった。
何を引用したらいいかわからないがさしあたって天気の「湿舌」の解説ね https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2010/2010_12_0043.pdf なので、より新しい天気図の前線位置で学習すると傾向がすこしちがうかもしれない。

もうちょっというと、前線というのは物理的実体ではなくて概念なので、慣習的なものとか国際的海上予報業務を捨象していえば、防災上のメッセージとして有用だから描かれるべきだし、
そもそも前線概念にこだわらず何が描かれるべきかも防災上のメッセージとして最も有用であるように調整されてゆくべきだと思う。
先生方の頭のなかの概念をめぐって「〜が本質である」とか「〜が正しい」という言い方はもう十分なされたので、「〜により豪雨がよりよく捕捉される」という調査がもっと現れることを期待したい。

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