2014-10-21

気象モデルを真に回転楕円体に対応させる研究と座標参照系

発端は WIS データカタログで座標系をどう書くか、というか、GRIB データで地球が平均半径 6371.229 km の球となっているのに対して、地理情報メタデータではどういうCRS(座標参照系て訳すのかな)を与えたらいいのかと聞かれたのですよ。

CBS-IPET-MDRD フォーラムの次のスレッドご参照:
https://groups.google.com/a/wmo.int/forum/#!topic/cbs-ipet-mdrd/bYa0kl9Kp3w

ちなみに上記地球半径については過去記事ご参照:
http://toyoda-eizi.blogspot.jp/2012/09/mean-radius-of-earth.html

で、気象モデルというのはたしかに地球を真球と仮定して方程式系を構成するわけですが、だからといって真球ベースのCRSを作って与えなきゃいけないというのは飛躍が過ぎます。いつも言っていることですが、

 ・データは何に使うかを詰めなければまともに検討できない
 ・事物の本質を記述すれば万事に応用できるというような発想は百害あって一利なし

なのであります。だからセマンティックウェ…と脱線するのはおいといて、で、突き詰めていえば

 ・CRSは地図がずれないようにデータにつけた注

なのですから、気象モデルに流し込む観測が持っている経緯度は実のところWGS84である(2006年CBS臨時会合勧告1)ことを思い出すと、ここはモデルの方程式系が何であろうが知ったことではなく、すべてのモデル出力は WGS84 による経緯度座標 geographical coordinate system と言っておけばいいのです。間違って球ベースのCRSなんか定義してしまったら、そこでいう緯度は地心緯度だということになって、最悪 21 km とかずれてしまいます。

地心緯度と地理緯度の図:
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/06/Two-types-of-latitude.png

(もちろんモデル出力が経緯度格子ではなく、地図投影された座標系上の等間隔格子に出されるのであれば、その地図投影の記述はなされるべきですがそれは別の話だし、いまどきそれが WGS 84 ベースでない例はUK National Grid みたいに極めて限られるはず。)

…と断言してしまってからその筋の人に聞いてみると、気象モデルで回転楕円体の効果を考慮しようという研究も最近はあるようです。

P. Bénard (2014, QJRMS): An assessment of global forecast errors due to the spherical geopotential approximation in the shallow‐water case
http://www.readcube.com/articles/10.1002/qj.2349

なんだかロスビー波の位相速度が地球離心率εのオーダーで変わるというので、2週間予報にとってはたしかに馬鹿にならないような気もしますが、まあいずれにしても今のところの現業気象界ではそこまでは考えていません。

ちなみに今のモデルでも地理緯度で観測と合わせるので、コリオリの力はあっているんですよね。だからジオポテンシャルとメトリックの誤差という言い方になるんだと思います。

で、元のスレッドの話はそれでは終わらなくて、INSPIRE では指定してもよい CRS が厳しく限定されているというんですね。
http://inspire-geoportal.ec.europa.eu/documentation/legal-and-tgs/ds/INSPIRE_DataSpecification_AD_v3.1/
の§6.1.2 あたり)
気圧座標はICAO標準大気で高度に換算せよ、と言われても、航空気象用でなければ異様ですし、さもなくば ISO 19111-2 で座標系を記述しろ、といわれてもエンコーディングの標準たとえば WKT2 (ISO 19162) は公刊されていません。UML だけ渡されてコンセプチュアルには表現できる、といわれても、あまりに無責任じゃないでしょうかINSPIREさんよ。まあそこまで怒ってもしょうがないので、とりあえず単に気圧ってかいとけば、といって様子見をしています。

なんで欧州の地理屋さんが欧州ローカルルールで気象機関の心配をしてくれない世話まで焼かなきゃいけないのか、と思わなくもないですが、まあ、WMO の専門家チームの共同議長だから仕方がありません。こういうことをやって初めて先進地の具体が教えてもらえるということもありますしね。

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